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蜜蜂と遠雷 読み終わりました

こんばんは。

2017年、直木三十五賞本屋大賞のW受賞した作品、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読み終えました。

 

この本はピアノコンクールを舞台にした作品で、そのコンクールを通して見える、音楽業界や人間模様がとても面白かったです。

 

この作品のキーパーソンは、母の死をきっかけに表舞台から姿を消したかつての天才少女栄伝亜夜、ジュリヤード音楽院に通い、亜夜の幼馴染の日系三世のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール、音大時代はコンクールにも出場したが今は楽器店勤務唯一の20代高島明石、そして、ピアノを持たず、父の仕事でいろんなところを転々とするかたわら、ピアノの巨匠ホフマンに師事していた15歳の少年風間塵。

この風間塵が亡くなったホフマン先生の紹介状を持ってコンクールに挑んだこたから物語は始まります。

 

 

この作品を書くにあたって恩田陸さんは浜松ピアノコンクールに何度も足を運び、朝から終了まで一日中ピアノを聞いていたそうです。

気が遠くなりそうな話ですが、それを実践されたから感じたであろう文章が所々に散らばっていて、リアル感がものすごくありました。

90人のピアノを聞き続けるってとても大変ですよね。

その感じがとってもよくわかりました。

そして、音楽界の問題提起もされていたのではないかと思いました。

 

 

①コンクールの仕様

どの先生に習うかである程度の順位は決まっているようなものというのが暗黙の了解的な感じがあります。(今は知りません)

大概その大御所先生は審査員として参加しているし、その界隈で力があるから皆さんね、、忖度とかね、、

なので本作品は国際コンクールだからそれが薄かったのかもしれませんけど、順位を見れば、師匠がわかるコンクールもあります。

だからこそ、本当の意味での1位は聴衆賞と言われるところもあります。

この作品ではそこのところもうまくついていて「うまいなー」って思わされました。

コンクールに出ることもそうです。

どの先生についているか?

どこの学校に行っているか?

コンクール歴はあるのか?

そのわかりやすい経歴上がなければ審査にも通らない。

パッと出は受け入れてもらいにくい。

全ては履歴書からなのかな。

 

 

②音楽界の未来

マサルが本の中で、「自分もラフマニノフのように自分で作曲した曲で勝負したい」という箇所がありました。

ポップスと違いクラシック音楽は過去の作曲家によって支えられています。

現代の音楽家が自分の作った曲で勝負する場所は決して多くありません。

演奏会の9割以上が過去の作品に支えられています。

過去に「素晴らしい(過去の)作品があるのになぜ新しい曲を弾く必要があるのか」と言われたことがあります。

そういう意識を持っている方が多いのがクラシック界の現状なのではないかと思います。

これから先、ラフマニノフのように作った曲をすぐに演奏する形をとる偉大な音楽家が出てくるのかどうかが楽しみです。

そして、そこに需要があるのかどうかも。

 

 

③音楽は誰のためのものか

高島明石が文中で「音楽界の専業者だけではない生活者の音楽があるとの強い思いがある」

という一文がありました。

いつの時代も音楽は身近なものだったはずなのに、昨今では音楽教育の削減、スポーツのように順位をつける音楽、そして、権力者の、金持ちのための音楽になっている部分があると思います。

世の中何にせよ「お金」ですが、才能があっても、お金がなくて楽器が買えない、レッスンに通い続けられない、そういったこともあります。

そして、先生の地位が高くなるほど高額になっていくレッスン料。

1時間5万円なんて世界もあったとかなかったとか。

まぁ、もっとする人はするんでしょうね。モゴモゴモゴ、、、。

気楽に誰でも楽しく音楽ができるようになった反面、こういった世界があるのも現状です。

それに、「騒音」問題。

今は少しの雑音も許せない時代になっています。

新しい幼稚園や保育園が作れないのもそれを大いに受けています。

なので、「音」を出すことがとても難しくなっているのです。

今はほとんどの賃貸分譲マンションで「ピアノ不可」の物件が増えています。

それではどこで気楽に音楽が出来るのでしょうか?

田舎で?いいえ。田舎でも難しいです。

私たちの生活で根ざすべき音楽は消えて行こうとしています。

 

いろんな問題が湧いてはもっと湧いてくる今、この本を通して、あなたは何を思うのか。

そして、どんな形でもいいから音楽の素晴らしさを知って欲しいと願います。

でも、この本を読んでピアノを始めたいと思う人間がいるかどうか、、、。

少なくとも私は思いませんでした。

 

 

あなたはどうですか?

 

 

難しいことをたくさん書きましたが、お手軽に手にとって読んでみてください。

作品自体はとても素晴らしく、音楽の内側を見抜いた方だけど、理想もしっかりと埋め込んでくださった素敵な作品だと思います。

また、そのうち読み返したいなと。

上巻の半分を過ぎたくらいからは一気に読めますので笑

 

 

 

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)